07/4/10

図書カードと不信感

カテゴリー: - 管理人 @ 14:46:31

投稿:兼業社長

I君は歴史とクルマが好きな若者だ。アルバイトはしているが、十分な小遣いがあるとはいえない。定期の雑誌も、だから奧の棚にたまってしまう。お金があるときといつでもどうぞ、というのが当店の流儀だから、奧の棚に雑誌をためるのは、なにもI君に限ったことではない。コミックとクルマのOさん、建築関係のHさん、などなど。それぞれ奧の棚の場所が決まっていて、ひとかたまりずつの場所を占めている。
そのI君が「2000円の図書カードを手に入れたのでその分だけ引き取りたい」とやってきた。閉店間際だが、もちろん大歓迎。さっそくカード用の読み取り機で引き落としを始めました。ところが、2冊目以降エラーが出て引き落としができない。しばらくがんばったが、どうにもなりそうにないことは明白だ(下図)。
1冊目は引き落とせたから残額はわかる。私は残額分の金額と引き換えにカードを預かることにして、残りの商品を精算することにした。ひとりになって改めて考えてみると、私には図書カードについての知識がほとんどないことに気がついた。
こういう場合、どうするのが正解だったのだろう。週明けの月曜日、勤務先から図書カードの発行元である日本図書普及株式会社に連絡を入れた。相談のつもりでこういう場合どうしたらよいのでしょうね、と聞くと、「基本的には利用規程に従って、使用したお客様の責任で指定の住所に送っていただくことになっている、読み取った金額分のカードをお客様に返送します」という返事。そうすると、I君に「このカードを裏に書いてある住所に送ってください」と告げて、残りの商品は渡さないというのが正解なのだろうか。でも、1回目は読めたんだから、機械のせいじゃないの、といわれれば何も言い返せない。何よりも、「使用したお客様の責任で」というところに反応してしまったのだった。 今の季節は特に、図書カードを買ってくださるのは進学や卒業のお祝いに使う地域の保護者の皆さんだ。そうすると、それを使うのは近所の小中高校生だということになる。カードを持ってきた小学生に、商品を渡さないばかりか、この住所に送ってね、なんて言えるだろうか。私は言えない。
電話口で担当者にかなり強い口調で詰問してしまった。その内容は覚えているが、思い出してもはしたないばかりなので省略する。 当たり前のことだけど、図書券ならこんなことはなかったのだ。お金のかかる読み取り機を導入する必要もなかった。額面にプレミアがつかない以上、お客様のためを考えて磁気カードにしたんだ、という理屈は成立しないと思う。額面以下のお買い上げのとき、お釣りを現金で支払わなくてもよいというのは書店の利益にはなるかもしれないが。
このことについては少し説明が必要かもしれない。図書券の仕入れと精算は額面の95%なのだ。図書券の販売がゼロで、すべてのお客様が他の店で買ってきた図書券で支払いをしたと仮定すると、実質の売上は5%ダウンすることになる。たとえば550円のお買い上げに500円の図書券1枚と現金50円で支払っていただいたとする。図書券は精算すると475円だから、現金50円と合わせて525円の売上ということになる。ところが、1000円の図書券に現金450円のお釣りを出したとする。1000円の図書券を精算すると950円になってしまい、450円現金を使っているのだから、500円の売上しかなかったことになってしまう。もともと粗利が20%程度なのだから、550円の売上で書店の取り分は110円、それが後者の場合では60円、50円値引きしたのと同じ事になってしまう。しかも消費者に割安感はないのだから、人知れず書店だけが損をしているような計算になる。磁気カードになって、端数はカードに記録されて残ることになり、お釣り問題で悩む必要がなくなった。
磁気カードになって一番変わったのは何かというと、高額面のカードが生まれ、オリジナルカードを作ることが可能になって、広告や記念品、景品として使われることが増えてきた、ということだ。プリペイドカードは先払いの債権だから、インフレ経済下なら実質額がどんどん減少していく。キレイなカードがコレクションとして使われずにしまい込まれれば、図書の売り上げとは関係なく図書カードの売上は伸びる。発行元は大もうけだ。結局、そのことをねらってつくられた商品なのではないのか。調べてみてわかったのだが、オリジナル図書カードの印刷代は、テレフォンカードやオレンジカードの印刷代よりかなり割高だ。それかばかりか、高額カードほど一枚当たりの単価が高い。500円のカードを300枚作ったとき、テレカやオレカは一枚当たり750円、図書カードは831円。250円と331円が印刷その他の諸費用だ。テレカやオレカは額面が変わっても諸費用の金額は変わらない。ところが、図書カードでは同じ300枚でも額面1000円では諸費用427円、5000円ではなんと730円。どんどん高くなる。なぜだ。ちなみに、クオカードも同じ料金体系である(NTTグループ螢蕁Εルトのホームページによる)。噂では、高額面のカードは使用期間が長いから、その分宣伝効果が高いため、高い印刷代を設定している、という。宣伝かよ。消費者の利便じゃないのか。まあ、噂だからこれ以上つっこみませんが。
書店にとっても消費者にとっても利益のある図書カードというのはできないのだろうか、と思う。たぶんできないだろう。可能性があるとしたら、より汎用性のあるクオカードとの合体・合流だ。プレミア分をどこが吸収するのかが問題なのだが。すでにジュンク堂、三省堂ではクオカードで買い物ができるようになった。しかし、そもそも磁気カードそのものが偽造問題で次々になくなってきており、クオカードがこのまま残るとは限らない。世間の流れではプリペイドカードそのものが、クレジットカードと一体化することによってポイント制によるプレミアをつける方向で統一されようとしているように思える。 そうすると、今度はクレジットカードでの販売に対応しなければならなくなるのだろうか。そう思うとなんだか気が重たくなる。
もっとも、I君やOさんが、クレジットカードでたまった雑誌を買いに来る姿というのを、どうしても想像することができないのだが。


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