07/3/1

街の本屋さんが消えてしまう

カテゴリー: - okano @ 11:29:25

日書連刊行の全国小売書店経営実態調査報告書
『 別冊 書店経営者の生の声』を読んで

                             ブックメール倶楽部代表
                                   岡野秀夫

皆さんの住んでいる街に本屋さんはありますか? ここ10数年の間に、街の本屋さんがどんどん廃業しています。どうもこの傾向は、今後、加速度的に進むようです。日本書店商業組合連合会(日書連)という、中小零細のいわゆる街の本屋さんが主に集まって作っている本屋さんの連合会があります。この連合会が最近出した興味深く、ショッキングな報告書があるのでご紹介いたします。

日書連の加盟店数は、ピークの1986年の13,000店弱から、昨年7000店を割り込み約6,700店と、20年間で半減しました。しかし、今後は、もっと急速に減少が進むと思われます。この報告書は全国2028店の書店からの回答だそうでが、一番衝撃的だったのは、報告書に回答した経営者の年齢です。60代が30.8%、70代以上が21.8%で、過半数が60歳以上の高齢者です。50代が29.9%ですので、50代以上をみても80%以上ということになります。ちなみに、20代は0.5%、30代、2.7%、40代が12.5%です。

現在の書店業界は、農業などと同じで、高齢者によって支えられているということになります。おそらく、あと10年するかしないかの間に、現在の加盟数も約半分になると思われます。何故なら、農業や他の零細小売業と同じで後継者がいないからです。

報告書を少々引用します。
・「当店も全盛期を100とすると20〜25ぐらいでしょうか。小生55歳、妻とパートさん計3名でやっています。私が父から店を継いだ時は、父と私の2世帯でも書店の売り上げでやってこられたのですが、これからは無理。子供は別の仕事につくことになりそうです。」(福島 駅・駅ビル 21〜40坪)
・「現在店を営業されている経営者は、自分の代で終わりにしようと思っているでしょう。子供に継いでもらいたいと思っている人は少ないと思います。しかし10年前はそんなことはなかったと思います。小さな店でも十分営業が出来る売上げもあった。大きな変化の10年でした。」(埼玉 住宅地 21〜40坪)
・「当店では後継を望む大学4年の息子に、親として責任が負えない事と出版界の夢なき事を諭して他の仕事につくようにさせた。あと数年で廃業するつもりです」(神奈川県 商店街 41〜100坪)
・「小規模零細書店の生きる(継続する)道はないと思います。ほとんどの店は自分の代で終わるのではないでしょうか。(中略)しかし、自分がやっている間は楽しくやるべきです。(中略)本屋は本当にいい職業です」(東京 駅ビル・駅前 21〜40坪)
・「子供の急激な減少で、家族だけの経営になってしまいました。以前は3人雇用しておりました。人口が8000人の小さな町です。(中略)夫婦でいつ店を閉じようかと思案しております。当店が閉店すると、本の配達をしている店はなくなります。」(愛媛 商店街 11〜20坪)

この報告書別冊には、タイトルの通り小規模書店の「生の声」が書かれています。それは、 取次(出版販売会社=商社)や出版社への怒りや憤りであったり、諦めであったり、現状を何とかしようとという希望であったりと色々ですが、上記に紹介したような声からは、「本屋が好きだ。でも、外部状況の悪化から、もう、矢折れ、刀つきた。同じ苦労を自分の子供にはさせたくない」というような率直な思いが伝わってきました。経営者の年齢という客観的なデータと書かれてあるテキストから、私は小規模書店の経営者からこのようなメッセージを読み取りました。そして、このようなメッセージが一番伝わった簡素な声がありましたので、ご紹介します。

「嫁いでより60年、殆ど休むことなく営業させて頂きました。悲しくて閉店出来ません。感謝をこめて「ありがとうございました」を丁寧に言い続けて居ります。ご質問の答えになりません。おゆるし下さい」(大阪 商店街 11〜20坪)

好きな仕事が続けられない。子供の代に引き継げないということがどうして起こったのか。その分析も大事だと思います。また、このような状況になるまで、出版界の人たちはどうして手をこまねいていたのかというような非難もあるでしょう。しかし、まずは、街の本屋さんがこのまま消えてしまったよいのかということについての皆様のご意見をお聞ききしたいと思います。

出版界は、本や雑誌の定価で販売ができる「再販制」という制度で守られています。それは文化や国民の知る権利を守る特別な産業だからという理由です。しかし、そのような保護を受けながらも、最近の外部環境の急激な変化で、(もちろん出版界の無策もあると思います)一番弱い小規模書店が次々に閉店、廃業しているのが昨今の現実です。街の小さな書店が消えても、アマゾンなどのネット書店や大手の書店チェーンがあれば大丈夫でしょうか。それともやはり困るのでしょうか。ご意見お待ちしております。


コメント

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  1. スーパー内の本屋の、十万円買うと千円くれる、ポイント制の魅力には抗い難い。私としても、収入が少ないので、ついそちらで買ってしまう。街の本屋さんのオーナーさんご一家、店員さんたちの方が好きなのだけれども・・・・・・。

    Comment by sakisaki — 07/3/1 @ 17:51:43

  2. 5年ほど前埼玉県北部で書店を経営してきた父が死去、後を追うように母も急死しました。サラリーマンの息子の私は、店をどうするかずいぶん悩んだんですが、とても閉店する気になれず、平日は姉に店を見てもらい、休日に私が仕入れと返品作業をする、という形でなんとか書店を続けています。インターネットとメールがあるので、希望通りとは行かないまでも、なんとか棚ぞろえを保つことができるのはホント助かります。店を引き継いだとき、当店の年商は1500万でした。今もそれはほとんど変わっておりません。本の粗利は2割程度ですから、姉にわずかばかりの賃金を出せばそれで消えます。私はこの店の売り上げで大学まで行かせてもらいました。全盛時の2割程度の売上だろうという意見には首肯させられます。両親が亡くなってから休みなし仕事漬けの生活を続けていますが、それも私に親不孝者の自覚があったこと、独身者であること、平日の仕事が出版社勤めで、問題意識が元々あったことが主な理由でしょう。私の問題意識はこうです。チェーン店ばかりになれば、商人はすべて勤め人になります。それで、どうやって地域の文化を形成しようとするのでしょうか。私は教育系の出版社に勤めていますが、子どもたちを学校、家庭、地域の3者で育てようというのが、今言われている教育改革の具体策なのではないですか。地域が商店街を育て、商店も地域のなかで生かされているという実感がある。小中学生が店のおじさんとおばさんから声をかけられながら育っていく。美しいではありませんか。ようこそいらっしゃいませ、○○の方いかがいたしますか、では子どもも育ちようがありません。町作りには個人商店が不可欠です。消費者に有利なんだから、自由競争の結果なんだから、大型店、チェーン店が増えるのは仕方ない、ということならそれで結構。ただ、私はそういう考え方が気に入らない。気に入らない以上、態度で示すほかはないと思ったのです。父は長いシベリア抑留のあと郷里に戻り、平和で文化的な仕事をと書店経営を始めました。嫁いできた母は当然のように本屋の仕事を手伝わされ、それしか知らずに逝きました。本屋の仕事が次第に儲からない、つまり重要ではない仕事になっていったことに、二人とも無念の思いでいたと思います。せめて細々とでも続けることで、その無念を晴らしたい。……時々私は夢想するのです。一定の年収がある人は、国民としての義務で決められた場所に個人商店を開く必要があることにする。高い年収なら条件も厳しくなる。定年も45歳くらい、さらに残業は絶対認めないことにして、会社は原則副業は認めることにさせる。そのかわり個人商店を開けば免税、貸付金の優遇措置などの優遇制度をつくる。会社組織として店舗を開く場合は優遇しない。とにかくその地域に根付いて、地域の活性化に役立っていることにたいする優遇制度にする。2007年問題やニート対策をあれこれ考えるなら、こちらの方がずっと効果があると思いますけれどね。それで本屋が増えすぎたら、私としてはちょっと困るけれど。

    Comment by 兼業社長 — 07/3/2 @ 04:47:39

  3. okanoです。sakisakiさん、兼業社長さん、コメントありがとうございました。

    まず、ポイント・カードの問題ですが、公正取引委員会というお役所の機関が、出版界には特別に再販制(書籍や雑誌を定価で売っていい権利)を与えているのだから、その権利を公正に行使しているか、ということを消費者の立場から監視しています。

    sakisakiさんのように、少しでも安く本を買いたい、有利に買いたいというのが消費者の権利です。そのような消費者の権利を阻害していないかということを監視しています。ポイントカードについては、本屋さんの連合会の日書連は再販制を壊すものとして反対。一方、出版社の中には、読者のお楽しみ程度の低率のものなら目くじらを立てずに、書店の販売促進に活用すればいいのではないかという意見もあります。どちらもそれなりに筋が通ったものだと思います。

    ただ、現在のように街から本屋さんがドンドン消えていっているという状況が、消費者の利益にかなっているかという点からこの問題やそのほかの問題も考えることが大切のような気が「生の声」を読んでからはしてきました。公正取引委員会や政府、地方自治体なども、この問題をもっと真剣に考えるべきだと思います。

    兼業社長さんの地域の商店街に対する問題意識、私も同じようなことを考えておりました。ただ。それを実行されている兼業社長さんのご努力には頭が下がります。言うはやすしで、実際に実行することは本当に大変です。

    ところで、実は私も兼業社長なのです。本職は零細出版社の役員。アフター5や休日の仕事がこのサイトの運営会社の社長です。このようなサイトを作ることは、出版界にとって不可欠だと思い作りましたが、今のところ大赤字です。しかし、多くの方々が良いことだと励ましてくださるので、希望を持ってこの仕事をしております。

    零細書店も大変ですが、小さな出版社も大変です。書籍のPRに新聞広告などはとてもお金がかかりますので、多くの出版社が一つのサイトで情報を発信することによって、安価な書籍のPRの場を作ろうと考えました。また、書店さんにとっても、書籍の刊行前の情報などを得て、注文もできるという場が欲しいはずだと考えました。また、時には、本に関する問題を読者や書店の皆様、出版社の皆様、あるいは著者の皆様と考えたいと思い、このような場を設けました。

    また、皆様のコメントお持ちしております。

    Comment by okano — 07/3/2 @ 22:17:37

  4. okanoさん、兼業社長です。okanoさんのご努力はとても理解できます。出版される本の種類は多く、店の棚は限られている。一方、出版社はそれぞれかなりいけている本を出していると思っている。店主の不勉強のせいで、よい本を並べきれずにいるのだな、と焦燥感のようなモノを感じます。結局勉強が足りなくて、ブックメールクラブの情報も、きちんと使いこなせていない状態です。反省しています。
    一つ報告をしたくて書きました。トーハン系列に雑誌の定期便というのがあります。年間購読を申し込めば原則送料無料で自宅に宅配業者が配達を行うというモノで、商品によっては価格が安くなる、景品が付くなどの特典があります。それが、2月から送料購読者負担の枠を広げました。理由はヤマトがメール便規定の見直しをしたから、だそうで、厚さが2センチを超える商品は3,720円新たにかかるとのこと。学年誌など付録付きコミックはもちろんのこと、月刊コミック誌はほぼ全部が対象になります。学年誌など年間で5,000円ほどの商品に、半額以上の送料が加えられるのです。「消費者にとって利益があることだから」「配達しなくていいのだから、書店さんにもメリットがあるでしょう」というのが定期便担当者の言い分でした。配達がなくなった分、お客さんと顔を合わせる機会が減ったような気がします。メリットなんか何もありません。そしたら今度は送料を有料にするという。消費者に対する詐欺ではありませんか。お客さんに事情を話したら、そんなにかかるんだったら配達してよ、といわれる。配達せざるを得ません。同じ荷物を運んで、3,720円もらえる仕事ともらえない仕事。これはいったい、どういうことなのでしょう。消費者の利益優先というのは、かいつまんでいうとこういうことが次々と起こる、ということなのではないですか。……ウチのように配達もする書店なら、年間購読なら配達奨励金を出す、とでもいわれたら、喜んで注文を取ってきます。何しろ、今までタダで配達してきたんですから。書店の喜びは、本を読者の手元に届けることです。お客様の、喜ぶ顔を見ることです。当たり前のことですよね。報告書の、「嫁いでより60年、殆ど休むことなく営業させて頂きました。悲しくて閉店出来ません。感謝をこめて「ありがとうございました」を丁寧に言い続けて居ります。」というのは、間違いなく私の死んだ母の言葉でもあります。消費者のための利便を追求するビジネスモデルだけで本屋を成立させるべきではないと思います。皆さんの手で、地域の書店を育ててやってほしい。なんかキレイごとですみません。でも、やはりこれが本心に一番近い気持ちです。

    Comment by 兼業社長 — 07/3/5 @ 21:59:27

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