07/6/6

ICタグって本当に役に立つの?

カテゴリー: - okano @ 23:12:27

少し前、ある勉強会での話の中で、出版界でも導入が検討されているICタグの現状について聞く機会がありました。

ICタグは、SuicaやPasmoのようなもので、本に装着して主に流通面での合理化を促進しようという趣旨で、経済産業省の後押しなどもあり、出版界では実証実験を続けております。このICタグがすべての書籍に装着されると、たとえば書店に送られてきた書籍を梱包をとくことなく検品したり、SuicaやPasmoを改札機に読み取らせるのと同じような要領で、店頭在庫をチェックでき、たな卸しなどに利用できると言われています。

プライバシーなどの問題もあるようですが、ICタグの値段さえ安くなり、すべての書籍に装着されれば、出版流通は革命的に合理化される、というのが私も含めた出版界の多くの人たちの認識だと思います。事実、勉強会の講師も同様のことを話されました。

しかし、この勉強会の少し前、電機メーカーに勤める友人から気になることを聞きました。今は管理職で、部署もICタグの部門ではないそうですが、もともと通信機器のエンジニアで、出版界のICタグのことについて社内で知る立場にあり、たまたま大手倉庫会社でやった実証実験も見学したことがあるそうです。 基本的な技術についてよくわかっていている彼が、出版界のICタグについて、検品や棚卸しの合理化など出版界が期待していることは、言われているほど簡単ではないと言うのです。なぜかと言うと、ICタグには電波を受信し、発信するアンテナがついているそうですが、そのアンテナ同士があまり近くに接近していると混線し上手く作動しないからだそうです。ですから梱包された中身を、ICタグを使って正確に識別するのは難しいと言っておりました。実証実験では人為的に電波がキャッチしやすいようにしていたようです。部署が違うので、断定はしておりませんでしたが、彼の口ぶりでは、一朝一夕では解決できないような問題のように感じました。このようなことを聞いていましたので、講師にこの件を質問しました。 しかし、講師は多少の問題はあっても、技術革新は早いので問題はないだろうとのことでした。私自身、資料などありませんでしたし、雑談の中での話だったのでそれ以上質問できる内容は持ち合わせておりませんでした。

ただ、講師の方は、問題ないと断言しておりましたが、私はどうも腑に落ちない点がありました。一つは、技術革新は早いと言われていますが、厳密に見てみると、革命的な技術革新はそれほど起こっていないように思います。私自身、以前別の業界で、日本の製造現場を見てきましたが、大きな技術革新というものに立ち会った経験がありませんでした。私がいた業界がそのような業界だったのかもしれませんが、基本的な技術が大きく変わるということは、どの業界でもあまりないように思います。たとえば、私が子供だった1960年代から、次の高速鉄道はリニアモーターカーになると言われてきました。21世紀になったら当然、新幹線はリニアモーターカーに代わっているだろうと子供心に思っておりました。ところが、21世紀になっても実用化はされていません。燃料電池車などもきっと同じだろうと思います。急速な技術革新と感じられるものは実は、小さな改良改善の積み重ねが多いのです。電波の混線の問題は、小さな改良改善の積み重ねで解決できるようなレベルの問題なのでしょうか。

もう一つは、実験室で行えたことが、様々な特殊な条件が重なる実際の実用段階レベルの段階で上手く機能するかという点です。実証実験は、専門家から見ると、電波の混線が起こらないような人為的状況を作って行われていたようです。ダンボール箱に入っていて、外から見えない状態で本に装着されているICタグが、混線しないように適当な距離を保ちながら梱包されているという状況は考えにくいように思います。

このように書いてまいりましたが、これはあくまで私の推測です。ICタグの現状について、何が事実であるかを判断する材料を私はこれ以上持ち合わせておりません。どなたか有力な情報をお持ちの方は、是非、お聞かせいただきたいものだと思います。

経済産業省がお金を出してくれるから、適当に実証実験をやってみよう、ではあまり芸がないように思います。ICタグで何ができて何ができないか、ということを正確に把握し、出版流通の改善のためには、どのような利用方法があるのかを真摯に考えなければ、いくらICタグの研究を進めても意味あるものにはならないように思います。


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