豪農研究は長い研究史を持ちつつも、いまなお色あせない研究テーマである。最近では地域社会論や政治的中間層論、社会的権力論といった諸研究が進展するにともなって、近世後期から明治初期にかけて大きく変容する地域社会を特徴付ける存在として、豪農が再び脚光を浴びている。
本書では、豪農経営の発展や地域社会の変容を踏まえつつ、地域社会において政治的・経済的に大きな役割を果たした豪農を多角的に分析している。具体的には、大坂にほど近い丹波と河内の豪農を取り上げ、地域内における階層分解の様子とそれにともなう地域秩序の変容を明らかにし、そうした事態に豪農は自らの経営をどのように変化させ、地域社会の課題にどのように対処したのかを考察している。
また、当該期に豪農が地域社会と領主権力の媒介項となり、地域社会の公共性を担う姿を明らかにすることで、これまでの豪農論を克服し、より豊かな豪農像および地域社会像を描き出している。
ISBN:978-4-7576-0703-3 C3321 |
きんせいのごうのうとちいきしゃかい 日本史研究叢刊27 近世の豪農と地域社会 |
定価(税込) : ¥7,480 |
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著作者よみ : | つねまつたかし |
著者名 : | 常松隆嗣 著【著書を検索】 | |
出版社 : |
和泉書院
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発売日 : | 2014年3月20日 | |
ジャンル : | 日本史(近世) | |
判型A5/328頁 |
目次
序章第一節 研究史の整理
第二節 本書の課題と校正
第一部 丹波の豪農と地域社会
第一章 近世後期における豪農と地域社会―篠山藩大山組園田家をめぐって―
はじめに
第一節 農村構造の変化
第二節 園田家の経営
第三節 園田家と地域社会
おわりに
第二章 篠山藩における国益策の展開―豪農の献策を中心に―
はじめに
第一節 丹波国諸藩における藩政改革
第二節 篠山藩における国益策
第三節 国益策の具体的展開
第四節 国益策の展開と藩・豪農・地域社会
おわりに
第三章 陶磁器生産をめぐる豪農と地域社会―近世後期の篠山藩と三田藩―
はじめに
第一節 原材料と流通をめぐる争論
第二節 立杭焼座方改革の展開
第三節 殖産興業策の導入と地域社会
第四節 地域社会と豪農
おわりに
第四章 篠山藩における新田開発―近世後期の荒地開墾型新田をめぐって―
はじめに
第一節 農村の荒廃と新田開発
第二節 新田開発に見られる諸関係
おわりに
第五章 幕末維新期における豪農の活動と情報―丹波の豪農園田家を中心に―
はじめに
第一節 情報収集とその内容
第二節 情報の入手ルート
第三節 情報の活用と地域運営
第四節 情報選択のあり方
おわりに
第六章 園田多祐と国益策―地域社会の繁栄をめざして―
はじめに
第一節 当該地域の様子と園田家の経営
第二節 多祐の諸活動と国益策
第三節 多祐の意識と人的ネットワークの形成
おわりに
第二部 河内の豪農と地域社会
第一章 近世後期における河内の諸相
はじめに
第一節 所領構成の特徴
第二節 各地域の生産力と商品作物生産の展開
第三節 村々の階層分解と地主経営
おわりに
第二章 農村構造の変容と地主経営―北河内の幣原家・濱田家をめぐって―
はじめに
第一節 農村構造の変化
第二節 当該地域における地主経営
おわりに
第三章 近世後期における北河内の豪農―茨田郡三ツ嶋村樋口家をめぐって―
はじめに
第一節 豪農経営の展開
第二節 豪農の政治的行動
おわりに
第四章 豪農と武士のあいだ―茨田郡士の帯刀をめぐって―
はじめに
第一節 茨田郡士の帯刀問題
第二節 郡士のなかの武士
第三節 武士と士族のあいだ
おわりに
第五章 大塩の乱後にみる家の再興と村落共同体―門真三番村茨田家・高橋家をめぐって―
はじめに
第一節 乱直前における村の状況
第二節 茨田・高橋両家の再興と村
第三節 惣作地の創出と共同所持
おわりに
終章
第一節 本書のまとめ
第二節 今後の課題
あとがき
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