ISBN:978-4-7576-0628-9 C3395 |
おおえけんざぶろうしがなおやのんふぃくしょん 近代文学研究叢刊50 大江健三郎・志賀直哉・ノンフィクション - 虚実の往還 |
定価(税込) : ¥6,600 |
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著作者よみ : | いちじょうたかお |
著者名 : | 一條孝夫 著【著書を検索】 | |
出版社 : |
和泉書院
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発売日 : | 2012年8月25日 | |
ジャンル : | 散文 - 近代・現代 | |
判型A5/323頁 |
私小説の方法を逆用することによって新しいナラティブを現実化した大江健三郎、実生活を無媒介に表白する私小説の作家と目されながら、見かけ以上に複雑な構造の小説を書いた志賀直哉、さらには、実記でありながら、その根拠となる事実からの脱化を内的要請とする(明治期の)ノンフィクションの多様な試みを読解する。表現行為の虚と実が往還する精妙な工夫に注目しようとするものである。
目次
序説I 大江健三郎と周縁(辺境)
大江健三郎と六〇年代の〈アメリカ〉―ラルフ・エリスンのいわゆる〈多様性(ダイバシティ)〉をめぐって―
一、アメリカ行き
二、エリスンの〈憂鬱〉
三、『見えない人間』の〈多様性〉
四、主題に選ばれる
大江健三郎と北方少数民族―われらの内なるギリヤーク人―
一、北方少数民族
二、テレビドラマ「オタスの森」
三、「幸福な若いギリアク人」
四、異質性の共存
「狩猟で暮したわれらの先祖」―日本人の古層への想像力―
一、〈山の人〉とは何者の謂か
二、〈山の人〉と沖縄人
三、〈父あるいは父に似た男〉のモチーフ
四、古層への想像力
「四万年前のタチアオイ」―虚実の行き交い―
一、虚実の間
二、Y・Sさん(吉永小百合)
三、タチアオイの花
四、「茱萸の木の教え・序」
五、女性的なるものの力
II 大江健三郎と先行文学
大江健三郎と志賀直哉―〈自己探検〉の旅程―
一、「私小説について」
二、志賀直哉論
三、私小説を解体する?
四、私小説(ししょうせつ)
大江健三郎と谷崎潤一郎―関係性の阻害―
一、谷崎の大江批判
二、谷崎潤一郎論
三、「異端者の悲しみ」と「鳥」
四、谷崎体験からの解放
大江健三郎と川端康成―美しい〈あいまいさ〉―
一、感性と批評眼
二、師弟と敵対
三、生首のイメージ
四、美しい〈あいまいさ〉
五、〈あいまいな(アムギュアス)〉窮境
III 志賀直哉
「大津順吉」の二元的な自己―志賀直哉とツルゲーネフ―
一、島崎藤村の講演「種を播く人」
二、ツルゲーネフ読書の様態
三、『大津順吉』の二元的な自己
「城の崎にて」―境界領域の病理―
一、「いのち」とASD
二、〈城の崎〉体験とPTSD
三、境界領域
四、〈城の崎〉体験からの回帰
「赤西蠣太」―原作と映像の共軛―
一、文芸作品の映画化
二、映像の内面化と省略法
三、映像的な解釈
IV 明治期のノンフィクション
石井研堂『日本漂流譚』―孫太郎漂流記の場合―
一、『日本漂流譚』成立の経緯
二、孫太郎漂流記の場合
三、〈奇談〉の展開
四、虚実の葛藤
乾坤一布衣『最暗黒之東京』―貧民窟探訪記の成立―
一、探訪記の成立
二、構成企図
三、究極の〈最暗黒の世界〉
島村抱月の「悲劇論」―悲劇と厭世詩人―
一、「悲劇論」の問題
二、厭世思想論議
三、抱月の近松研究
四、私情悲劇
河口慧海『西蔵旅行記』―女難、あるいは色欲の問題をめぐって―
一、なぜ旅行記か
二、精進と捨戒
三、女難
四、接触交流
あとがき
人名索引
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