本書は、萬葉集研究の最新の成果を取り入れたテキストとして刊行されるものである。その概要は次のようになる。
(1)西本願寺本をはじめ、諸写本、刊本、注釈書類を参照して本文を定め、適宜、句読点、傍訓、返点を加える。
(2)本文の主要な校異を頭注または脚注に示す。
(3)各巻の目録および西本願寺本巻一、巻二十の奥書を掲げる。
(4)新旧国歌大観番号を頭書し、寛永版本の丁数を脚注に示す。
(5)歌句の主要な異訓(参考訓)を脚注に掲げる。
(6)字余り句中に含まれるア行音およびヤ行のユの音が直前の音と一体化する部分を符号で示す。
(7)傍訓などに含まれる上代特殊仮名遣の甲類乙類の別を明示する。
特に、(6)・(7)の二項目については、はやく学会において明らかにされていながら、これまで公けにテキスト類に反映されることがまったくなかった事項であり、本書の特色をなす条項といってよいであろう。
![]() |