この物語のテーマは「待つこと」である。
著者が提案しているのは、「待つこと」がもはやできない現代人に対して、「待つことはそう難しいことじゃないし、そう悪いことでもない」ということである。「待つこと」、それはすなわち、つまり一瞬だけでもいいから立ち止まってみようとすること、そして一瞬だけでもいいから周囲をじっと静かに見渡してみること、一瞬だけでもいいから自分の心に問いかけ対話してみることである。そのような目に見えないくらい本当に小さな個人的な変化が、信じられないかもしれないけれど、実際に世界を動かす大きな変化への一歩になるのだということを、この愛らしい登場人物たちが繰り広げるおとぎ話風の物語の変遷は語っている。
その可能性を信じるも、信じないも個人の自由。でも私たちはそろそろ、その小さな個人の変化が潜在的に持っている大きな世界への影響力を信じなければならない時代に来ているのかもしれない。と、そんなことをあれこれ思索したりするのも、本書でいう「待つこと」の一部なのだろう。
「訳者あとがき」より
ISBN:9784903439228 C0097 |
おおかみがたまごをあたためたら 狼がたまごを温めたら |
定価(税込) : ¥1,760 |
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著作者よみ : | ぱおら・ますとろーこら |
著者名 : | パオラ・マストローコラ 著【著書を検索】 | |
川西麻理 訳【著書を検索】 | ||
出版社 : |
シーライト パブリッシング
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発売日 : | 2012年6月15日 | |
ジャンル : | その他諸外国現代文学 | |
判型四六判/288頁 |
著者略歴
1956年イタリア・トリノ生まれ。リチェオ・シェンティーフィコ(理科高等学校)にて文学を教える。著書に“La gallina volante”(イタロ・カルヴィーノ賞〔1999〕)、カンピエッロ賞〔2000〕、ラパッロ・カリージェ女流作家賞〔2001〕を受賞)、“Palline di pane”(ストレーガ賞最終候補作品〔2001〕)、“Una barca nel bosco”(カンピエッロ賞〔2004〕、アラッシオ・チェントリーブリ賞〔2004〕受賞)など多数の賞を受賞。またエッセイ、“La scuola raccontata al mio cane"などがある。
現在、日本では『君はだぁれ?』(シーライトパブリッシング)が発行されている。
編集者からのコメント
『君はだぁれ?』の続編で、前作の自分探しから今回は「待つこと」をテーマに展開される物語です。![]() |