「表現主体と言語の交わる場を読み解く」
第I部は、長期間にわたり発表してきた『発心集』論を、あらためて補筆体系化した九章に、『十訓抄』論二編を加えて構成。第II部には、発表時に反響の大きかった副詞的「あやまりて」についての論を再構成して収録したほか、『方丈記』、西行などに関する論考を収める。第I部はおもに説話集を編纂する主体に関する研究であり、第II部は語と表現の解釈に関する問題をおもに扱う。
ISBN:978-4-7576-0880-1 C3395 |
ほっしんしゅうとちゅうせいぶんがく 研究叢書501 『発心集』と中世文学 - 主体とことば |
定価(税込) : ¥9,900 |
![]() |
著作者よみ : | やまもとはじめ |
著者名 : | 山本一 著【著書を検索】 | |
出版社 : |
和泉書院
|
|
発売日 : | 2018年6月8日 | |
ジャンル : | 散文 - 中世 | |
判型A5/328頁 |
目次
口絵 木陰のタチツボスミレ自序
凡例
第I部 説話集と編者主体
第一章『発心集』卷一・卷二の展開―思索の表現としての説話配列―
1 再出家の話群(第1話から第5話)
2 物欲・執心の話群(第6話から第8話)
3 無名の聖たちの話群(第9話・第10話)
4 偽悪の話群(第11話から第13話)
5 慈悲・非所有の話群(第14話から第18話)
第二章 袈裟と琵琶―社寺宝物伝承と『発心集』編者の関心―
1 袈裟説話の性格
2 心情への関心
3 琵琶説話の性格
4 編者による操作
第三章 『発心集』の思想的核心―往生の条件―
1 宿業―往生の条件の不可知性―
2 主体的思索へ
第四章 『発心集』の法華読誦仙人譚から―編者の関心と説話配列―
1 法華読誦仙人譚の問題点
2 出奔した弟子(第38話)
3 独居修行者と大寺院(第39話)
4 構図の逆転(第40話)
5 『発心集』の構成―「間奏部」という提案―
第五章 恩義と信義への関心―『発心集』増補の可能性との関係において―
1 八巻本巻末前後の説話連接
2 恩義と信義の主題による連接
3 「間奏部」における第62話の異質性
4 補説―巻四から巻五への移り―
第六章 『発心集』の一面―貴族の道心―
1 少納言統理遁世のこと(第54話)
2 中納言顕基出家籠居の事(第55話)
3 成信、重家同時に出家する事(第56話)
4 花園左府八幡に詣で、往生を祈る事(第57話)
5 まとめにかえて
第七章 『発心集』の数寄説話
1 成通と西行
2 永秀と時光・茂光
3 数寄聖蓮如
第八章 『発心集』の終章
1 巻六終結説について
2 第74話をめぐって
(1)原拠説話の問題
(2)固有名詞の問題
(3)『発心集』の中での第74話
3 第75話をめぐって
(1)『発心集』的諸要素の集成
(2)「終章」の意味
4 『発心集』の構成と性格
第九章 『発心集』と『閑居友』『撰集抄』
1 『発心集』の反「智者」性
2 慶政・長明と慈円
3 『閑居友』の「智者」性
4 『撰集抄』の自己権威化
5 補記―『発心集』巻七・巻八について―
第十章 『十訓抄』と歌物語
1 歌物語依拠の形態(一)
2 依拠の形態(二)
3 「第五」の配列の中で
4 「第八」の配列の中で
5 作品諭・編者諭に向けて
第十一章 『十訓抄』の注釈的空間―『俊頼髄脳』『古来風体抄』関係説話から―
1 『俊頼髄脳』の受容
(1)『十訓抄』が参照した『俊頼髄脳』
(2)諸書の「相互注釈的」な関係
(3)編者の「理解」と「無関心」
(4)編者の「誤読」、文字づらの影響力
2 『古来風体抄』の受容とその周辺
(1)『古来風体抄』と『大和物語』
(2)「桂の御子」問題に対する編者の姿勢
3 時平・国経・平中譚をめぐって
(1)国経の妻と平中の妻
(2)「岩躑躅」の歌の作者
(3)腕に書かれた歌
第II部 ことば、こと、もの―読解のために―
第一章 副詞の「あやまりて」―『宇治拾遺物語』『平家物語』の語彙から―
1 『宇治拾遺物語』の用例、その一(用例一)
2 『宇治拾遺物語』の用例、その二(用例二)
3 『平家物語』の用例(用例三)
4 その他の用例
5 補足的説明
6 ここまでのまとめ
7 用例の追加
第二章 「夢見」と「議勢」―『平家物語』の語彙から―
1 「予告する」意味の「夢見」
2 「議論」もしくは「議論の趣旨」の意味の「議勢(義勢・擬勢)」
第三章 「霞」と反照―藤原家良歌の「ほてり」など―
1 「霞」に対応するべき和語は何か?
2 和語「かすみ」に対応するべき漢語(漢字)は何か?
3 和語「かすみ」の範囲と「霞」との接点
4 漢語「霞」の範囲と「かすみ」との接点
第四章 「ふるさと」と「ふるや」―『方丈記』の和歌的修辞―
1 歌語としての「ふるさと」
2 歌語としての「ふるや」
3 まとめ
第五章 外山と音羽山―『方丈記』の修辞と歌枕―
1 地名の妥当性と修辞の妥当性
2 三つの「音羽山」
3 遠望される歌枕「音羽山」
4 修辞としての「音羽山」と「外山」
第六章 「もんをむすびて」―思想形成期の親鸞―
1 慈円伝と親鸞伝
2 「恵信尼消息」の「もん」をめぐって
3 『三夢記』が示唆する軌跡
4 結語
第七章 冷然―稚児追考―
1鰐淵寺文書の稚児
2「冷然」の用例、『玉葉』ほか
第八章 きさらぎの望月―西行「願はくは花の下にて」の周辺―
1 往生―臨終のイメージ―
2 歴月―桜と太陰太陽暦―
3 配列―勅撰集と私家集―
第九章 寂蓮治承之比自結構百首―西行の一面―
1 歌林苑と奉納和歌行事をめぐって
2 寂蓮勧進の百種をめぐって
第十章 藤に似る菫・風待つ花―自作注読解―
1 景物へのまなざし―藤原俊成の場合―
2 到来する風情―慈円の場合―
あとがき
著者略歴
1952年生。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(文学)大阪大学。大阪大学文学部助手、金沢大学教育学部講師、同助教授、同教授を経て、2018年3月まで金沢大学人間社会研究域学校教育系教授。![]() |