西鶴では、浮世草子の町人物を取り上げて、とりわけ警句について綿密に分析、文学的観点に歴史的観点を加味し、商都大阪に生きる商人の合理的思考を論述した。
さらに西鶴の浮世草子の中に、高野山に関する宗教的説話を取り上げて作品としたものがある。その史実と伝承が文学にどのように影響を及ぼしたのかについて考察を加えた。
次に、西鶴とは異なるタイプの芭蕉の作品を取り上げた。すなわち『おくのほそ道』に見える言葉の本文中の読み方、風狂性、表現意識および『幻住庵記』について考究した。
その他の俳諧関係では『俳諧をだまき』の諸本系統を明らかにした。同書(竹亭著 元禄四年)は、江戸時代に最も普及した俳諧作法書の一つで、幕末に至るまで出版され、増補版、改訂版がある。それほどの読者の需要があるにも関わらず、従来あまり研究されてこなかった。そこで膨大な数の諸本を分類して、時系列に整理し、上方版、江戸版の系統を提示した。
元禄十一年の無倫(江戸の俳人)が撰者をつとめた清書帖『無韻惣連千九百余吟』の翻刻を収録する。元禄時代の清書帖の現存は少なく、貴重な資料である。
ISBN:978-4-7576-0761-3 C3395 |
きんせいぶんがくこうきゅう 研究叢書463 近世文学考究 - 西鶴と芭蕉を中心として |
定価(税込) : ¥13,200 |
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著作者よみ : | なかがわみつとし |
著者名 : | 中川光利 著【著書を検索】 | |
出版社 : |
和泉書院
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発売日 : | 2015年7月20日 | |
ジャンル : | 散文 - 近世 | |
判型A5/646頁 |
目次
西鶴の創作意識の推移と作品の展開㈠町人物の各説話に表れた警句法とテーマを中心として
はじめに
一、『日本永代蔵』における警句法
二、『永代蔵』における警句法の特徴
三、『永代蔵』の各章のテーマと警句法
四、『永代蔵』の序章と主題
むすび
五、『日本永代蔵』に表れた警句(一覧表)
㈡『世間胸算用』と『西鶴織留』の各説話に表れた警句法とテーマを中心として
はじめに
一、『世間胸算用』における警句法―『胸算用』に表れた警句 ―
二、『日本永代蔵』と『世間胸算用』に表れた警句法の相違点と関連性
三、『世間胸算用』の主題
むすび
四、『世間胸算用』に表れた警句(一覧表)
㈢西鶴の町人物(三作品)の比較考察による町人物の総括と、『西鶴置土産』の各説話に表れた警句法とテーマを中心として
はじめに
一、『甚忍記』の行方についての私見
二、『西鶴織留』における警句法と、『織留』二分説の論拠
三、『西鶴織留』の主題と、西鶴の町人物(三作品)の総括
四、『西鶴置土産』の主題と、『置土産』に表れた警句法
むすび
五、『西鶴織留』に表れた警句(一覧表)
六、『西鶴置土産』に表れた警句(一覧表)
㈣『西鶴俗つれづれ』と『万の文反古』の考察
はじめに
一、万の文反古』の構想と方法―その序文を中心として―
二、『万の文反古』の成立
三、西鶴が書簡体小説を採用したのは何故か
四、『万の文反古』の主題
五、『万の文反古』の諸問題―その草稿の成立時期に及ぶ―
六、『西鶴つれづれ』について―巻三の一「世にはふしぎのなまず釜」小考―
むすび
『西鶴諸国ばなし』と伝承の民俗
―「巻四の三」の素材と方法を中心として―
はしがき
一、作品の構成上の問題点と私見
二、覚海上人の伝承を中核的素材源とする論拠
三、作品と素材(覚海伝承)との関係(共通点)
四、覚海伝承の素材源の考察
五、作品(弟子坊主)と素材(如法・小如法伝承)との関係(共通点)
六、如法・小如法伝承の素材源の考察
七、西鶴の作品と毘張房の伝承との関係(新資料)
むすび
「命に替る鼻の先」の素材と方法の再検討
―『西鶴諸国はなし』考―
はしがき
一、
二、
三、
むすび
西鶴と『沙石集』
はじめに
一、西鶴の作品と『沙石集』の関係―『沙石集』の目録(巻・番号)にそって―
二、西鶴の作品と『沙石集』の関係―西鶴の述作年代順(推定)にそって―
むすび
『おくのほそ道』における「三代の栄耀」の読み方
はじめに
一、問題点と私見
二、論拠の第一点 漢詩的な発想と方法
三、論拠の第二点 伝統的な規範意識
四、論拠の第三点 辞書史の主流は「えいえう説」である
むすび
芭蕉における風狂性について
―『おくのほそ道』の旅を中心として―
はじめに
一、芭蕉における風狂性としての乞食志向と増賀像
二、「魚類肴味口に払捨」た精進生活の意味するもの
むすび
芭蕉における「無能」の表現意識について
―『おくのほそ道』を中心とする―
はじめに
一、『おくのほそ道』の旅行の動機と目的
二、『おくのほそ道』における問題点と私見
三、論拠としての内部徴証と「移芭蕉詞」
四、「無分別」(「分別」)の表現意識
五、思想的背景としての『撰集抄』
むすび
『幻住庵記』序説
―その構想と方法―
はじめに
一、『幻住庵記』執筆の意図
二、「記」のモデルとしての『挙白集』とその異本
三、「記」の系譜としての『幻住庵記』
四、「先たのむ椎の木も有夏木立」の句意とその典拠(創見)
むすび
『幻住庵記』考
―主題と句解を中心として―
はじめに
一、『幻住庵記』の主題と句意
二、句意の論拠の第一点―終章の結びと句に投影している『荘子』の思想―
三、句意の論拠の第二点―句意に投影している「無何有の郷」の意味するもの―
四、句意の論拠の第三点―句意に投影している『挙白集』―
むすび
『幻住庵記』における解釈上の問題点の考察
はじめに
一、「唯睡癖山民と成て、孱顔に足をなげ出し、空山に虱を椚て座ス。」の真意
二、「罔両に是非をこらす。」の真意(むすび)
『幻住庵記』における解釈上の問題点
はじめに
一、問題点と私見
二、「罔両に是非をこらす。」の真意。(むすび)
芭蕉における「無能」の表現意識について
―『幻住庵記』を中心として―
はじめに
一、問題点と私見
二、論拠の第一点 「無能」の表現意識とその系譜―原点としての「南花の心」―
三、論拠の第二点 否定(実は肯定)の論理としての「無用の用・不才の才」の思想
四、論拠の第三点 思想的背景としての周辺資料
五、論拠の第四点 「俳諧道」樹立の自覚の系譜と無能意識
六、論拠の第五点 『幻住庵記』(五異文)の文章構成と推敲過程(むすび)
『彼此集』の序文執筆者と編者について
―解題を通して特に編者説を中心に、竹亭と暮四の位置づけに論及する―
『無韻惣連千九百余吟』
一、書誌
二、本文
三、解説
俳諧作法書『をだまき』の諸本について
―通説の元禄十年版(二冊本)は他の異版である点を中心に―
一、
二、
三、
むすび
初出一覧
あとがき
著者略歴
大正十三年生まれ。高野山大学卒業。早稲田大学大学院修士課程修了。元大阪商業大学教授。論文「西鶴と『沙石集』」(暉峻康隆編『近世文藝論叢』中央公論社)、「『西鶴諸国ばなし』と伝承の民俗―「巻四の三」の素材と方法を中心として―」(檜谷昭彦編『論集近世文学3 西鶴とその周辺』勉誠社)、「西鶴の創作意識の推移と作品の展開」(『大阪商業大学商業史研究所紀要』)他多数。
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